第628-645話魚人島総力戦 5 】



そこで初めてサンジの身体がしっとり濡れているのに気づく。

(汗びっしょりじゃねえか…)

見れば額にも金髪が張り付いている。

(急いできた のか?)

ゾロは、痩せた男に対し、下半身からの炙られるような情欲とは別の感情が突き上げ、口づけたまま細い躰を衝動的に抱きしめた。

サンジは目尻に涙を滲ませて苦しそうにしながらも、激しいキスに必死で応えている。

(なんで、こいつは)

(こんなに俺にこたえよーとすんだ・・)

口を開けばムカつくことしか言わないこの男が、手を伸ばせば全身で応えてくるのが不思議でならない。

バーソロミューくまに、ルフィの身代わりを申し出たときも、サンジは自分の代わりに死のうとした。

あまりにもあっさりと。

人間なんて簡単に死ぬ。

この体がいなくなる・・と考えた途端、勝手に体が動き、当て身をくらわせていた。

もしこの存在がこの世界からいなくなったら、自分だけがのうのうと野望を見据えて生きてゆけるのか。

彼を消し去った世界を憎み、そのものを壊し続ける道を選択する可能性は高い。

そうなれば、ルフィと戦うことも避けられないだろう。

その予感だけはあった。

(わかってんのかこのアホは)

(簡単に死のうとするんじゃねえよ)

汗で湿った髪を、不器用な手つきで撫でる。

するとサンジの小さな頭が、コテンと自分のゴツイ肩に凭れ掛かった。

その仕草に再びスイッチが入る。

ごちゃごちゃと考えていたことはすべて吹っ飛んだ。

コックの温かい躰の中へ、熱に炙られたモノを捻じ込むことで頭がいっぱいになる。


【第628-645話魚人島総力戦 6へつづく】






[戻る]  [続き]  [TOP]