【第628-645話魚人島総力戦 3 】
ゾロは憤りを隠しもせず、
「んなことねえよなあ?」
「お前ら俺のあとについてきてたもんな。」
コックの反対側から殺気を漲らせた剣士に肩を叩かれウソップは思わず顔を引き攣らせる。
何回も反対方向に走る男を呼び戻したと喉まで出かかったのを曖昧に笑って誤魔化した。
「い、いや〜ハハ・・」
「ま、まあとりあえず脱出できたんだからいいじゃねえか。」
だが、まあまあとなだめるウソップにゾロは吐き捨てる。
「ふざけんな!」
「こんな鼻血マユゲに恩を着せられたんじゃたまったもんじゃねえ!」
「んだと?」
サンジもウソップを突き飛ばし、ゾロの胸ぐらに掴みかかる。
「てめーこそもっと素直に感謝しやがれ!」
「大体てめえは日ごろから感謝の気持ちが足りてねえんじゃねーのか!?」
非常時だというのに睨み合う二人。
「いーかげんにしろよ!お前ら喧嘩しねえと会話がすすまねーのか!?」
だが二人はウソップの声も耳に入らない様子だ。
「とりあえず私たちは先に王の処刑広場へ行きましょう」
「ルフィさんたちもいるはずです」
さきほどから黙って様子を見ていたブルックに促され、
「そうなんだけどよ・・ 」
このまま行っていいものかどうか躊躇してしまう。
(ったく。こないだまで早くエロガッパ連れて来いだの今日中にヤりてえだの騒いでたくせに)
(わかんねーやつらだ)
するとブルックは、人差し指を立てた。
「私たちがいるとなかなか素直になれないでしょうから二人にしたほうがいいんですよ」
そういわれてようやく合点がいった。
「おお、なるほど。さすが年の功だな。」
ウソップは、まだぎゃあぎゃあと言い合いを続ける黄色のと緑のをしり目に、ようやく広場に向かって走り出した。
「・・しかしほんっとにめんどくせえやつらだな」
途中、呆れたようにつぶやくと、
「まあ、恋愛なんて、そんなもんなんじゃないんですか?」
「そうなのか?」
自分にはまだよく わからない。
故郷の村で別れたきりのカヤはずっと自分を待っていると言ってくれた。
(カヤと喧嘩なんてしたことねえもんなあ・・)
あんな強くて俺様な奴らがレンアイだなんていまだに信じられない。
(ヤってる・・ってホントなのか??)
サンジのよーなチンピラ丸出しの男がゾロの前でどんなふうにされているのか、とか想像もつかない。
というか考えたくもない。
しかし、二年経ってお互いにどういう心境の変化があったのか知らないが、どうも奴らは以前よりもおおっぴらになってきたような気がするのだ。
(これで船に戻ったらどーなっちまうんだ!?)
毎日毎日いちゃつかれたりしたらさすがにいたたまれない。
(いやいやいくらなんでもサルじゃねえんだから、ちっと は我慢するだろ。)
だが間もなくウソップは、自分の杞憂が思い過ごしではなかったことを思い知ることになるのであった。
【第628-645話魚人島総力戦 4へつづく】