615話妄想 【サンジもヤっちまったモンはしょうがねえ!と言い放つ】



気付けば、サンジ・チョッパーの足元には、意識不明のネプチューンの城からの警備隊達が転がっていた。

「なんでみんなやっつけちゃうんだよ!!」

もともと自分が変身して大暴れしていた事は記憶にないのか、チョッパーがサンジを責める。

「だってよ〜…コイツら手錠とかはめようとすっからつい…」

「見ろ!みんなあんなに俺たちのこと白い目で見てるぞ」

確かに、住民の皆さんが、遠巻きに自分たちを見ている。

でも、

「やっちまったモンはしょうがねえだろうが!ガタガタ抜かすな!」

「やる前に考えろよ」

(クソ、やけにこいつオレに突っかかってくんな。)

(やっぱアレか。俺がホモだって気付いちまったせいか?)

と、無意識に自分がホモだと認めるモノローグ。

しょうがねえ、ここは機嫌とっとくか。

「つかお前もカンフー技使ってたじゃねえか。アレなかなかよかったな。」

「そ、そんなこといわれたってうれしくねぇぞこのヤロー」

(ホッ)

(どうやらトナカイの機嫌も直ったらしい。)

(このまま色々忘れてくれりゃいいんだが・・)

(2,3発蹴り飛ばせば忘れるか?)
不穏な空気に気付かないチョッパーは、褒められて無邪気に有頂天になったままだ。

それにしても、と、タバコのフイルターを噛み締める

(せっかく竜宮城に行って人魚ひめちゃんに会うチャンスだったのにクソ)

(こーなったら自力でいくしかねぇのか!竜宮城に!!)

(人魚姫があの精力絶倫男の餌食になったら大変だからな!)

(それに、あの迷子ヤローでもたどり着けんだから、案内なんかなくったってオレに行けないわけねえ)

と、相変わらずサンジの頭の中はゾロのことでいっぱいなホモホモしさなのだが本人に自覚はない。

(だがあんにゃろうはタマに変に野生のカン発揮しやがる)

(さすがケダモノだけのことはあるぜ…)

ケダモノ…と考えて、またしても、自分がゾロから受けた様々なエロい映像が頭に浮かぶ。

(ンなこと考えてる場合じゃねえっつーのに!)

(でも・・)

と、じんわり足元を見つめる。

(あいつの方は、こーやって離れてるとき、ちょっとでも俺の事考えたりすんのかな…)

サンジには、時と場所を選ばずおっ勃てまくっているあの男が、普段は、エロいことなどみじんも考えたことのないようなストイックな面構えで澄ましているのが不思議でしょうがない。

そんなつれない様子が、実は女の子達からカッコイイなどと言われているのも知ってる。

 カマバッカにいたころ、そんな噂を幾度も聞いた事があった。


 『ホントに今まで誰ともしてねぇの?』

再会した日の夜、ヤってる最中だってのに気になってつい口をついて出てしまった言葉。

するとゾロは、

『お前で充分間に合ってる』

そう言ってくれた。そしてその言葉にコーフンしたのか、凄いケダモノぶりを発揮した。

「つか、あんな凶悪なツラでんなこと言っちゃってもにあわねえっつの!」

そんな悪態をつきながらも、そのときのことを思い出すだけでカラダが熱くなった。

「こんなんじゃオレばっかりアイツのことで頭いっぱいみてぇじゃねえか…クソ!」

タバコを地面に投げ捨て、踵で踏む。

ここが魚人島のサンゴが丘で、今から竜宮城へ行くことも、頭から消えていた。

その時、女の悲鳴が聞こえた。

(え?レディの悲鳴!)

条件反射でメロメロしているとチョッパーが

「サンジ!」

「ああ?」

慌てて顔をあげる。

「大変だ!ハチが」

「え?ハチ?」

「どうしたお前!しっかりしろ!」

「いま手当てを…」

ハチのカラダには無数の矢が刺さっていた。

「ひでぇ…いったいなんで!」

誰にやられたのかわからないが、友人の変わり果てた姿に怒りが湧く。

ハチは、瀕死の状態であるにもかかわらず、ゼイゼイ言いながらも、必死で口を開いた。

「おまえら、すぐここを出ろ」「リュウグウ王国は…崩壊する」

【616話妄想へつづく】

※615話おまけ チョッパーside

「医者はどこだ!」

どこからか聞こえた叫び声に素に戻るチョッパー。

サンジの方を見ると、赤い顔でタバコのフィルターを噛みしめていた。

この顔は見た事がある。

たまに昼間のサニー号で、サンジが強い雄の、ゾロの匂いや血の匂いをさせたまま料理をしているとき、こんな顔をしていた。

チョッパーはサンジが大好きだから、そんな顔をしているのを見ると、ゾロに対して少し頭にきた。

「サンジ、ゾロと喧嘩したのか?」

と聞くと、いつも、誰かに聞いてほしいけど言えないようなそんな表情を浮かべた。

そして

「なんでもねえから心配すんな」

そういって笑ってごまかすのだ。

トナカイの自分には二人がなんで交尾するのかも、お互いどう思っているのかもよくわからない。

もしかしたらこいつらにもよくわかっていないのかもしれない。

(だって結構バカだから)

(みんな知ってるのに、誰にも気付かれてないっておもってる)

(それに、こんなにツラそうな顔するくせにゾロと交尾するのをやめようとしないサンジはバカだ)

(でも、ゾロが男同士どうやるのかオレに聞きに来た事だけはサンジに内緒にしておかねえと・・)

(俺すぐに忘れてつい言っちゃいそうだから気をつけよう)

(ドーブツだからすぐ忘れんのはしょうがないって前にウソップが慰めてくれた)

チョッパーは、ついさっき、自分がサンジに褒められてニコニコ手拍子していた事も、動物なのですっかり忘れていた。

サンジの方を見ると今度は女の悲鳴にメロメロしている。

チョッパーは、サンジ、やっぱり馬鹿だなあ、と思った。









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