僕らが旅に出る理由2


「あいつらなにやってんだ」

「ほっときなさいチョッパー。よっぽどヒマなんでしょ」

ナミが雑誌を閉じて立ち上がる。

結局ゾロは手を洗わないままサンジの手からおやつを奪い取り、ぽいっと口の中に放り込んだ。

てっぺんにのっかっていたのは桜の塩漬け。

餡にも桜が練りこんであったらしく、よもぎの香りと絶妙なバランスだ。自然な甘みと桜の塩漬けがよく合っててうまかった。

「あ〜あ雑菌もろとも一口で食いやがってもっと味わって食え」

サンジが唇を尖らすと

「ちゃんと味わってるぞ」

そう言ってごくんと飲み込み、まだ餡の残った手をペロリと舐めた。

サンジの顔にじわっと赤みがさす。腹の上の細い身体の温度が上昇したのがわかる。

こういう雰囲気に聡いゾロが細い腰に手を当てると

「…昼間から何サカッてんだ」

赤い顔のままさんじがゾロの鼻面に皿を突きつけてきた。

皿にはあと4コよもぎ饅頭が残っている。

ゾロが皿を受け取るとコックがその肩に手を置いて立ち上がり、


「食ったら皿下げとけ」

ビシッと指を差してキッチンに戻っていった。


細い後ろ姿をじっと眺めていると、ゾロの回りにチョッパーやウソップがわらわら集まってくる。

「スゲーホントにゾロの頭と同じ色だ〜」

「へーどれどれ」


「お前ら食ったんじゃねえのか?」

ゾロが4コ目のおやつをほお張りながら言う。

「いや、俺らは今日どら焼きだったぞ?」

ウソップの答えになんとなくやっぱりそうかというキモチになる。

『お前のカビ頭再現したんだぜ』

コックの笑顔が浮かんだ。

「これうめえけどあんま甘くねえな」

いつの間にかルフィが最後の1コのおやつを横取りしていた。

「あっこらテメエ!!」

「ゾロ専用だな」

ルフィがニシシと笑った。




(なんだよなんだよあのケモノじみた食い方)

サンジは、ラウンジで夕飯の準備をしながらひとり思い出してまた赤くなった。

ゾロがおやつをごくんと飲み込んだときの喉の動きもペロリと指を舐めた舌もスゴくいやらしくて、でも凄いセクシーだった。


数週間前、あんなふうに自分もあのケモノにパクリと食われてしまった。

男とヤルのなんて勿論初めてで嵐に巻き込まれたような体験だった。






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