僕らが旅に出る理由1
雲ひとつない青い空。キラキラ光る大海原。
船頭に羊の頭をあしらった海賊船ゴーイングメリー号は今日もゆったりと航海中.。
羊頭の上には黒髪の船長がでろ〜っと伸びている。
「ひまだ〜〜さんじぃ〜メシ〜」
「今食ったばっかだろっ」
年中腹ペコの船長に鼻の長い狙撃手が突っ込む。
「平和なのもいいけどこうなにもないとオヤツくらいしか楽しみがないのよねえ」
パラソルの下でデッキチェアーに座り、雑誌を読んでいたオレンジ色の髪の航海士が退屈そうに伸びをした。
メリー号は、ここのところ敵襲にも嵐にも見舞われることなく、穏やかな航海が続いていた。
甲板では、寝るか鍛錬以外やることがなさそうな、ある意味ヒマとは無縁の男が駄眠を貪っている。
そこへ船内一多忙な男が、おやつの皿を持ってあらわれた。
「アホマリモ。おやつだぞ〜」
しなやかな身体が腹巻の上にどかっと座ると、ウトウトしかかっていたマリモ剣士の額にピシッと血管が浮き出る。
前は、ゾロを起こすときには踵落としだったのに、今は腹巻の上に乗っかるのがブームのようだ。
しかも骨ばった身体が反動をつけて乗っかってくるので結構痛い。
マウントポジションを取られた体勢やコックの体温、ふわっと鼻孔をくすぐるタバコの香りが微妙に居心地が悪く、
「テメエフツーに起こせねえのか」
と凶悪な顔ですごんだが、
「踵落としはやめただろ〜が。文句があんなら自分から起きてきやがれ」
と返され、言葉に詰まる。
サンジは皿の上の薄緑色のものを手にすると、ニヤリと笑った。
「んだよ〜お前が喜ぶと思って作ったのに。よもぎ饅頭」
―よもぎ饅頭?―
コックの白い手の中のモノに視線が注がれる。きれいなうすみどりいろの皮のてっぺんには桜色の花びらのようなモノがのっかっていた。
「スゲーだろ。お前のカビ頭再現して作ったんだぜ」
コックがニカッと笑う。
青い空を背景に柔らかそうな金髪が揺れていた。
無意識にコックに向かって手を伸ばす。
「よこせ」
「テメエ串団子振り回して手ェ洗ってねえだろ」
サンジはゾロの脇に放り出された巨大なダンベルを見て、おやつを持った手を引っ込めた。
「お前が乗っかってたら洗いに行けねえ」
ゾロが撫然とすると、さんじはニヤ〜っと笑った。
「じゃあホラあ〜ん」
「アホか」