僕らが旅に出る理由4
どうやら自分たちはかなり身体の相性がいいみたいだ。
でも、ゾロになんで自分と寝るか聞くのは躊躇われた。
「女と違って孕まねえしガンガンヤッても壊れねえから」なんて言われたら立ち直れないかもしれない。
最近ではゾロがやりたくなったらいつでもできるように深夜までなんとなくキッチンで待つまでになってしまったのだ。
(食欲も性欲も満足させてやってこれじゃスッカリ都合のいい女じゃね〜か)
「いやいや、おれもキモチ〜のが好きだから付き合ってやってるだけだ」
自分自身に言い聞かせるよ〜に呟く。
―なあナミ次の島で桜みれるみたいだぞ―
―へえ今が見頃なんだ―
―よしさんじに花見弁当作ってもらうぞ―
(花見か―)
アイツと一緒に桜みてえな。
桜みながら俺のメシ食わせてえ。
買い出しとか付き合わせてちょこっと二人で花見できねえかな。
ヤルばっかじゃなくて。
今夜アイツがキッチンきたら聞いてみっか?
「って何考えてんだっアイツと俺の間にんな甘ったるい空気あるわけねえだろ」
慌てて打ち消す。
アイツは…なんで俺とヤんだろな。
ゾロのキモチが知りたい。でも聞くのは怖かった。
深夜キッチンでゾロを待つ間、もしかしてもう来ないかもしれないといつも考えた。
飽きたのかとか、ムカつくコックとヤんのがバカらしくなったのかとか。
やっぱり男なんてキモチ悪くなったのかとか、いろんな悪い想像が頭をぐるぐる巡った。
ゾロがキッチンに入ってくるのは大抵そんな想像でさんじの小さい頭がパンパンになったころだ。
だから深夜ようやくキッチンにあらわれた男の姿をみると、いつも安堵のあまり泣きそうになるのだった。
(もちろんアイツはそんなこと気付いちゃいねえだろ〜けど…)
ガチャリと扉が開く音がした。
ゾロだ。
「なんだ。メシならまだだぞ」
タバコに火をつけながらさりげなく言う。
「いや…」
「酒ならダメだ」
さんじはゾロに背中を向けて冷蔵庫を開けた。
ピッチャーに入ったゾロ用栄養ドリンクをだし、テーブルに置いたグラスに注いだ。
「鍛錬したらちゃんと水分補給しろよ」
そう言ってピッチャーを冷蔵庫に仕舞い、再びゾロに背中を向けて夕飯の支度を続ける。
ゾロがさんじのついだドリンクをごくごく飲み干す気配がした。