愛し愛されて生きるのさ3

 

 船に残るナミのために、ベーグルサンドを用意し、町に降りたサンジは、とりあえず市場に向かってみた。

  市場で島の珍しい野菜や果物を見るのは、かなり気が紛れた。

  夏島の気候のこの島では夏野菜が特産品となっているらしく、どの野菜も今まで見たものの倍以上の大きさだった。

「なんだあコレ?みたことねえ。ズッキーニか??」

  楕円形のアメフトのボールくらいの大きさの緑の野菜を手にとってみていると

「ハハハ、 兄ちゃん、それはキュウリだよ。」

「この島じゃどの野菜も他の島の3倍近い大きさなんだ。しかも味はキュウリっていうよりナスに近いよ」

「ヘー!コレがキュウリ?面白しれえ食ってみてー。しかもデカいわりに実がしまっててウマソーだな」

 「 兄ちゃんずいぶん詳しそうだね。」

「まあな俺コックなんだ。」

「1コ50ベリーのとこ15ベリーにまけとくからまとめて買ってちゃどうだい?全然青臭くないし日もちするよ」

「んじゃとりあえず5コくれよ。今夜食ってみてウマかったらまた明日買いに来るぜ。」

「味は保証するよ。まってるからな兄ちゃん」


 ( スゲーなこの島。ナミさんから渡された買い物代でおつりがきそうだぜ)

  ナス味だと言う巨大キュウリが五個も入った紙袋をニコニコしながら抱えて歩いていると、前からすれ違った男に呼び止められた

「おい、さんじじゃねえか!」

見ると、赤毛の大柄な男が。

サンジが目を丸くする

「え?ケビン!?スゲー何年ぶりだ!?なんでこんなとこに」

「久しぶりだなあ!あのチビナスがずいぶんとでかくなったな」

 ケビンはバラティエ時代良く客としてやってきていた元海賊だ

 サンジがまだ子供のころから出入りしていて、かわいがってもらっていた。

「ケビンこそずいぶんオッサンになったな」

ニヤッとして言うと

「このやろう。相変らずクソ生意気だな」

 ケビンが陽気に笑い、大きな手でサンジの頭をぐりぐりと撫でた

「今何やってんだ?グランドラインにいるってことは箱入り卒業か?」

 「箱入りは余計だ。今海賊船のコックやってんだ」

「マジか?蛙の子は蛙だな。てことは今日は買い出しか?」
 

サンジの抱えた袋を見ながらケビンがいう

 「今日は下見ってとこだ。この島スゲーよ。見たことねえ食材がいっぱいあるから料理のしがいがあるぜ」

 ニコニコするさんじに苦笑しつつ

「だったらちょっとつきあえよ。お前も大人になったんだから少しはのめんだろ?」

「…おう。でも夜は帰ってメシつくんねえと」

途端にケビンが腹を抱えて笑い始めた。

「おまえ…コックっていうよりかーちゃんみてえだな」

「失礼なこというんじゃねえ!!」

「麗しいレディがお一人で留守を守っていらっしゃるんだよ!それに俺はか~ちゃんじゃなくて一流コックだっつの」

「ハハ。だよな。なんてったってあのゼフが育ての親なんだからな」

「まあな」

 昔に比べて少しだけ素直になったサンジに思わず笑みがこぼれる

「ま、とにかく俺の行きつけで一杯おごってやっからこいよ。」

 結局サンジは、ケビンに押し切られるかっこうで、町のBarにつれてかれた。

  そのBarは町の外れに位置し、20分程で到着した。

 木でできた扉は凝った模様で、なかなか雰囲気よさげなだった。

「まあ入れ」

 ケビンに肩を抱かれるように中へ押し込まれる。

 その時 一瞬、通りに緑色の頭が見えたような気がして、思わず振り返った。

 

目を凝らして緑頭を探したが雑踏の中にその姿は見られなかった

 

(いるわけねえか。いまごろどこかのきれいなレディといっしょに過ごしてるハズだ)

 忘れていた胸の痛みが、再び戻ってきそうになった

急に扉の前で立ち止まってしまったサンジに

 「どした?知り合いでも居たのか?」
 

 ケビンがサンジの見ていた方向に一緒に目をやる

「…見間違いだったみてえ」

  サンジはうつむいてタバコをくわえた。

その表情は前髪で隠れていて良く見えなかった。

 

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