ケビンと酒を飲むのは楽しかった。
グランドラインを航海している途中、守りたい女性が現れたため、船を降り、この島に住むようになったらしい。
「そんで、今夜はそのレディをほったらかして俺なんかと飲んでていいのかよ?」
グラスに口をつけたままサンジが言うと
「今日はいねえんだ。隣の島に住む両親の家に泊まりに行っちまった」
ケビンが肩をすくめる
「寂しいからってつきあわせんなよオッサン」
「ま、そう言うな。せっかくの再会だ。お前とこのまま別れるのももったいないしな。飲めよ」
ケビンがサンジのグラスに酒を注ぐ
「ところで、お前はどうなんだ?」
「…どうって何が」
「とぼけんなよ。好きな子いるんだろ?」
「何でそう思うんだよ」
「さしずめ、今日船番のお嬢さんってとこか」
「そりゃナミさんはサイコーに素敵な女性だけど…」
「違うのか」
ケビンが意外そうに眉をあげた
「同じ船の仲間か?」
「…まあ…」
「どんな子だ?髪の色は?」
「…緑」
「美人か?」
「美人っつ~か…整ったツラしてんだけど、いっつも眉間にシワよってんだ…」
「…そりゃ、気難しそうな子だな」
「ハハ。気難しいなんてもんじゃねぇよ。たぶんそいつは俺の存在自体が気にくわねえんだ…」
「そんな事ねぇだろ」
「いいんだ。いつかアイツが夢を叶えるところを見られれば」
サンジがニカッと笑う
「いや、例え見られなくっても…何処かでその知らせを聞く事さえできりゃ俺は満足だぜ」
「…本気なんだな。あのチビナスがなあ…」
「チビナスって言うな!!」
サンジがクチバシを尖らす
「ワリイワリイ。お前も大人になったんだな。オジサン嬉しいぞ~ww」
ケビンが金髪をグシャグシャかき混ぜた
「テメエ!!髪グシャグシャにすんなよっ」
「ハハハ。つい嬉しくてな」
その後サンジはケビンに
「海賊だったらこのくらい飲めるようにならねえとな」
と煽られ、
「このぐらい何でもねぇよっ」
と勧められるままに強い酒をグイグイと飲み続け、数時間後には完全に酔い潰れていた。
「……お~い、サンジ大丈夫か」
「うう…クソキモチ悪ぃ…」
「船まで送るぞ」
ケビンに抱き抱えられ、店を出た。
「船どっちだ」
「…あっち」
ヘロヘロのまま港の方角を指さす
途中何度も吐き気に襲われ、ケビンの「家に泊まるか?」と言う誘いを断り、なんとか船が停泊している港まで辿り着いた。
「いい船じゃねぇか…これがお前の夢を叶える船か」
「…ああ。だろ?」
「…いい船に…いい仲間。これ以上望んじゃバチがあたるよな」
サンジがケビンを見上げて笑う。
するとケビンは真面目な顔で言った。
「サンジ、海賊なら欲しいモノは奪いとれよ」
「え…」
サンジが目を泳がせて答えられずにいると、さっきのように大きな手でサンジの頭をグシャグシャとかき混ぜ
「ま、オジサンからのアドバイスってやつだ」
「…まあ…きいといてやる」
サンジはそう言ってケビンを抱きしめ
「会えて嬉しかった」
と呟くように言った。
ケビンもサンジを抱きしめ返し、黄色い頭をぽんぽんたたく。
「俺もだ。夢叶えたら教えろよ。お祝いに洗剤セットくらい送ってやるぜ?」
そう言って笑った。