船を降りてから鍛冶屋を探してウロウロしていたゾロは、いつも通り迷子になっていた。
腹の虫がなりはじめ、イラついてきた。
『昼飯片付かねぇ』
昼間のサンジの言葉を思い出す。
(やっぱメシ食ってから降りりゃ良かった)
今ごろ後悔してもゾロのメシは既にルフィの腹の中だ。
仕方ねぇ。どっかで食うか
通りの角を曲がり、路地に入ると、キラッと光るモノが視界に入ってきた。
さっき船で別れたサンジが、知らない男に肩を抱かれていた。
それを見た途端、体中にざわっと何かが駆け巡った。
路地を出て、反対方向にズンズン歩き始めた。
(誰だあの男。クソコックの奴があんな男に肩抱かれて嬉しそうにしてやがった。)
今見た光景が頭から離れない。
(あいつが男とヤろうが何しようが俺には関係ねえだろ。)
(好きにすりゃいい。)
めちゃくちゃに歩きまくって、気づくと、さらに何処だかか判らない場所に迷い込んでいた。
「クソ!!何処だここは」
左右を見渡すゾロの眉間のシワがさらに深くなる。
「お兄さん、泊まるとこ探してるの?」
濃い化粧を施した女が声を掛けてきた。
どうやら花街に入り込んでいたらしい。
「泊まるんならアタシのとこにおいで。いい男だから安くしとくわよ」
上陸の時は、いつも女のところに転がりこんで、溜まったモノを吐き出していた。
もともと今日もそのつもりだったし、声を掛けてきた女は、濃い化粧を差し引いてもまあまあ美人といえる部類で断る理由はない。
女に案内されたのは宿ではなく女のアパートだった。
「いつも部屋に呼ぶのか」
「その方が稼げるからね」
女が薄手のワンピースを脱ぎ、ゾロをベッドに誘う。
女を抱いていると、なぜかサンジの白い顔が浮かんできた。
金髪を乱しながら自分に貫かれるサンジの姿を思い浮かべ、ガンガン腰を打ち付け、射精した。
女は泊まっていくよう勧めてくれたが、これ以上ヤル気も起きず、港の方角と鍛冶屋の場所を聞いて船に戻ることにした。
溜まった欲望を吐き出したハズなのに、イライラは収まる気配をみせない。
今度は迷子になることなく船に辿り着き、キッチンではナミが、サンジが作ったベーグルサンドを食べながら海図を書いていた。
「あんた…その匂い。」
さっきの女の香水をまとったままキッチンに入ってきたゾロを見て、ナミが嫌そうに顔をしかめる。
「サイテー!!サンジ君が帰ってくるまでにその匂いなんとかしなさいよ!」
ナミは、テーブルをバンと叩いて立ち上がると、海図を持って自分の部屋に入ってしまった。
(クソコックがなんだっつんだ!!関係ねえだろがっ)
帰るなりナミに怒鳴られ、再びイライラし始めたゾロは、朝から何も食べていない事を思い出した。